静岡県掛川市にある土井酒造場が醸す酒「開運」は、ここ四十余年の間に各品評会で上位入賞を繰り返しその酒名を轟かせた実力ある大御所蔵です。

　その実力は蔵元の土井清幌社長の英断と能登杜氏四天王の一人と言われた波瀬正吉杜氏の技術の結晶から出来上がったものでした。

　土井社長は「営業に金を使うなら、その分を設備投資に使い、蔵人の負担をできるだけ減らす。そして、手造りの部分だけに集中してもらう」という考え方で惜しみなく設備投資を行いました。それに応えた波瀬杜氏が技術を磨いて積み重ねて行きました。

　また1986年からは杜氏の名前を冠した最上位酒（「能登流　開運大吟醸　伝・波瀬正吉」）を売り出し「開運」と言えば「波瀬正吉」、「波瀬正吉」と言えば「開運」と言われるくらい全国に酒名と杜氏名を知らしめました。

　現在その波瀬杜氏が完成させた開運の酒造りを引き継いでいるのが、波瀬杜氏より薫陶を受けた若き世代の蔵人達＝"チーム開運"です。今年で３造り目、新生開運は未だ波瀬杜氏が造っていると言っても過言ではないぶれない酒造りで定評を得て酒徒を更に魅了し続けています。

　残念なことに能登杜氏四天王と一人と言わた波瀬正吉氏は2009年夏に急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。

　現代の名工＝能登杜氏四天王とは、農口尚彦氏(菊姫→常きげん→引退)、中三郎氏(天狗舞)、波瀬正吉氏(開運→09年夏に急逝)、三盃幸一氏(満寿泉→引退)の４名と言われています。